PEP

プログラムの概要

 公共経済プログラムは、一橋大学政策大学院の4つプログラムの1つとして、経済学の専門知識に基づいて、税制、社会保障、地方財政など公共政策に関わる諸問題について正しく事実認識、説明、かつ評価できるとともに、必要な改革のデザインと執行を担う人材の育成を目指します。

 公共経済プログラムでは、2年課程と社会人1年課程の2つの課程があります。2年課程においては、中央官庁、地方自治体、NGO・NPO、研究機関など公共政策の現場で即戦力となるような政策分析能力と行動力をもった人材を育成していきます。社会人1年課程では、中央官庁、地方自治体など公共政策の現場から、そして政策と深く関わる民間機関から学生を広く募り、政策分析能力の向上を目指した教育を行っていきます。

図表1:一橋大学政策大学院のコース・プログラム・課程

 公共経済プログラムの一つの特徴は、1年課程および2年課程で、数多くの社会人を受け入れていることです。私たちのプログラムでは、経済学の基礎を徹底的に教えますが、現実の社会で、政策に関連する仕事をする中で、複雑な経済の仕組みや動きを冷静に見ることのできる能力を高めたいという希望を持つ社会人の方々は少なくないと考えるからです。

 広く社会人を受け入れることは、公共経済プログラム全体のメリットでもあります。講義やワークショップでの社会人学生を交えたディスカッションは、経済学というツールが、現実の政策問題を新鮮な切り口で分析する道具となることを明らかにしてくれます。そこには、経済学という「理念」より個人や社会の「現実」を出発とする学問の有用性や面白さを垣間見ることができるはずです。

 しかし、経済学的な考え方を身につけるためには、基礎からきちんと学んで行くことが重要です。その過程では、例えば数学や統計の知識を習得することも必要であり、その習得に困難を覚える学生も少なくありません。そこで、私たちはチュートリアルの時間を設けて、全員が基礎力を確実に習得できるような教育体制を整えています。このようなテクニカル・トレーニングにおける教育のきめ細かさは、私たちが最も大切にしていることの一つです。それを通して形成される基礎が、その後の実践的なトレーニングに生きてくると考えるからです。


図表2:カリキュラム(概念図)

 実際、本プログラムに所属する学生は、在学中から、事例研究の講義を初め、ワークショップやコンサルティング・プロジェクトといったプロフェッショナル・トレーニングを通じて、さらには定期的に開催されるシンポジウムの機会などにおいて、実際の政策問題に関わる多様な人々との接点を数多く持ちます。1年間あるいは2年間という限られた期間ですが、学生には、現実の政策問題から少しだけ離れたところで、大局的な観点から多面的に考える機会を、出来るだけ多く提供したいと考えています。

 少数精鋭教育。これは一橋大学における教育の伝統の一つですが、その伝統が私たちのプログラムの中にも生きています。1学年15名程度の学生が、経済学の基礎を学ぶ必修科目をすべて履修し、時には助け合いながら、時には切磋琢磨しながら、経済学的な考え方を身につけていきます。そこからは、共同体的な関係も生まれています。一橋大学政策大学院 公共経済プログラムが、これから日本そして世界で、政策問題に関わる人々のネットワークの一つのハブになってくれるのではないかと期待しています。

 私たちのプログラムの特徴の一つは、学生と学生の間のみならず、学生と教員の間の距離が近いことではないかと思います。少人数教育という恵まれた環境の中で、学生と教員は様々な機会を通して接し、様々な問題について語り合います。その関係は、卒業後も続いていくことになるでしょう。本プログラムの教員自身は、様々な形で現実の政策問題に関わっており、日常の交流を通して、学生に対して政策への幅広い関心と経済学的思考を持ってもらいたいと考えています。

 このように公共経済プログラムでは、基礎から実践まで、政策に関する教育を丁寧に行っています。高いレベルの政策分析・政策立案の能力を備えた人材を育てて行くためには、きめ細かな教育が大切だと考えるからです。本プログラムの卒業生が、政策の現場で活躍していってくれることを期待しています。そして、様々な政策問題に関心を持ち、その解決のために働きたいという希望を持つ人たちが、私たちのプログラムに関心を持ち、入学してきてくれることを願っています。