プログラム(3月2日 9:00-12:30)

開会の挨拶(9:00-9:10)
 
第Ⅰ部:世界の民主主義(9:10-10:30)
民主主義社会を維持していくには?
(1) 基調スピーチ(15 分程)
  Larry Diamond 教授
(2) コメント
  中満 泉 氏 
  市原麻衣子 教授
(3) 討論
 
休憩(10:30-10:50)
 
第Ⅱ部:日本の民主主義と経済(10:50-12:10)
民主主義社会の維持はなぜ難しいのか?
(1) 基調スピーチ(15 分程)
  山重慎二 教授
(2) コメント
  Jay Rosengard 博士
  佐藤 主光 教授
(3) 討論
 
閉会の挨拶(12:10-12:20)

問題意識・テーマ

 過去20年において、民主主義国家の人口は徐々に低下し世界の人口の30%程になったと言われている。これは、権威主義政府の勃興、そして民主主義体制を維持できなかった発展途上国や低開発国の存在によるところが大きい。民主主義社会の持続可能性には、疑問が投げかけられている。 
 このような現象や疑問は、民主主義システムに脆弱性が存在することを示唆する。その脆弱性は、民主主義社会の自滅を引き起こしたり、民主主義体制の崩壊を目指す人たちに狙われたりする。そして、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行、ロシアによるウクライナ侵攻、東アジアによる地政学的リスク、そして温暖化に禁する気候変動など、世界が直面している様々なリスクやショックが、民主主義社会のさらなる衰退を招く可能性もある。
 今回のシンポジウムでは、私たちが続けてきた(経済学・グローバルガバナンス・公法の)学際的な科研プロジェクト「リスク、ネットワーク、デモクラシー:持続可能な社会経済の制度設計」での研究成果も踏まえて、以下の2つの観点から、民主主義社会の持続可能性の問題について議論する。
(1) 民主主義社会はなぜ持続することが難しいのか?
(2) 世界で民主主義社会を維持・拡大することは可能だろうか?
 討論では、アジアに位置する重要な民主主義国家である日本の課題に注目し、世界の民主主義社会の持続可能性を高めるための日本の役割について議論する。
 まず第Ⅰ部において、世界が直面している様々なリスクとも関連づけながら、世界の民主主義について議論する。そして、第Ⅱ部では、経済や財政の観点から、日本の民主主義の持続可能性を考察し、民主主義社会のレジリエンス(しなやかな強さ)を高めるための政策のあり方について議論する。

第Ⅰ部のパネリストのご紹介

 

Larry Diamond 教授は、アメリカのスタンフォード大学フーバー研究所およびフリーマン・スポグリ国際問題研究所のシニア・フェローを務める。スタンフォード大学政治学・社会学教授。世界の民主主義のトレンドや条件に関する研究、そして民主主義を守り推進するための政策や改革に関する研究などで、数多くの研究成果を公表してきた。50冊を超える編著・共編著がある。近年の著書 Ill Winds(日本語訳『侵食される民主主義』は、アメリカおよび世界の自由民主主義が直面している挑戦について分析し、高い評価を得ている。

プロフィール(リンク)

 

中満泉氏は、2017年5月から国際連合事務次長として軍縮担当上級代表を務める。中満氏は、ジョージタウン大学外交大学院で修士(国際関係論)の学位を取得し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に入所。その後、国連のキャリア職員としてPKO・安全保障分野や人道支援分野などさまざまなポストを歴任し、2014年から国際連合開発計画(UNDP)の危機対応局長を務め、現在に至る。なお中満氏は、2005年から2008年まで一橋大学国際・公共政策大学院で教授および客員教授を務めている。
 
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市原麻衣子教授 は、一橋大学大学院法学研究科および国際・公共政策大学院に所属。専門は、国際関係、民主化支援、外交政策など。著書にJapan’s International Democracy Assistance as Soft Power: Neoclassical Realist Analysisがあり、Diamond 教授の『侵食される民主主義(Ill Winds)』の監訳も務めている。World Movement for Democracy や East Asia Democracy Forum の運営委員会(Steering Commitee)委員、そして市民によるガバナンス推進会議の理事なども務めている。
 
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第Ⅱ部のパネリストのご紹介

 

山重慎二教授 は、一橋大学大学院経済学研究科および国際・公共政策大学院に所属。科研プロジェクト「リスク、ネットワーク、デモクラシー:持続可能な社会の制度設計」の研究代表者を務める。著書『家族と社会の経済分析~日本社会の変容と政策的対応~』は日経・経済図書文化賞を受賞。英語版を Economic Analysis of Families and Society: The Transformation of Japanese Society and Public Policies として出版。持続可能性に関する研究として『日本の社会保障システムの持続可能性: データに基づく現状分析と政策提案』(編著)がある。
 
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Jay K. Rosengard 博士は、ハーバード大学ケネディー行政大学院で、公共政策に関する教育・研究を行う。45年以上にわたり、開発政策のデザイン、実施、評価に携わり、様々な援助資金提供者と協力して、途上国や低開発国の開発政策の支援を行なってきた。現在、Ash Center for Democratic Governance and Innovation および Center for International Development に所属。著書として Economics of the Public Sector, 4th ed.(Stiglitz 教授と共著)がある。国際・公共政策大学院アジア公共政策プログラムでも、毎年教鞭をとっている。
 
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佐藤主光教授 は、一橋大学大学院経済学研究科および国際・公共政策大学院に所属。現在は社会科学高等研究院医療政策・経済研究センターのセンター長も務める。著書として『地方交付税の経済学: 理論・実証に基づく改革』(日経・経済図書文化賞受賞)や『地方税改革の経済学』(毎日新聞社エコノミスト賞受賞)などがある。政府税制調査会、財務省財政制度等審議会、内閣府規制改革推進会議などの委員を歴任し、『ポストコロナの政策構想:医療・財政・社会保障・産業』(共著)などの著作を通じて、実際の政策形成にも貢献する。
 
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