国際・公共政策大学院は二十歳になりました!

予測困難な時代を生き抜く力を身につける 

  2025年4月、国際・公共政策大学院(通称 IPP)は、二十歳になりました。2005年に設立されたIPPは、国際政策・公共政策の専門家を育成することを目的とする専門職大学院です。理論と実践の両方を重視する新しいタイプの大学院で、私たちも試行錯誤を重ねてきましたが、幸い優秀な修了生を、これまで数多く社会に送り出すことができました。
 一橋大学は「日本及び世界の自由で平和な政治経済社会の構築に資する知的、文化的資産を創造し、その指導的担い手を育成する」というミッションを掲げています。その一翼を担う専門職大学院として、私たちは、これからも様々な社会課題の改善に取り組むことができるリーダーを育てていきたいと考えています。
 IPP が設立された20年前、すでに世界ではグローバル化が進み、情報技術の急速な発展で、社会の変動性・不確実性・複雑性・曖昧性が高まり始めていました。複雑な社会問題の根源的な構造を深く理解し、不確実で曖昧な状況においても、表層的な変化に踊らされることなく、将来を見据えた正しい選択を行えるような人材の育成を、IPP ではこれまで目指してきました。

昭和記念公園(立川市)の大樹

 深く根をはった樹は、予測困難な気象の変化にも耐えて生き延びることができます。人類社会を動かす様々な力を深く理解できる「根っこ」を深く地中に伸ばすことができた人は、予測困難な状況においても、慌てることなく冷静な判断を行い、大樹のように人々を守り、社会を良い方向に導くリーダーになることができるでしょう。
 そのような人材育成のために、IPP が重視してきたのは、(1) 社会科学の基礎を学ぶことを通じて社会を動かす力への理解を深めること、そして、(2) その理解に基づいて現実の諸課題の本質を理解し、解決する力を磨くことでした(「20年の歩み」のサイト)。
 知識や情報はすぐ役立つかもしれません。しかし、それらの多くは陳腐化し、忘れ去られてしまいます。一方、IPP で磨かれる論理的思考力、戦略的思考力、批判的思考力、課題発見・課題解決能力などは、「身につく」ものであり、一生の財産になります。そしてそのような能力は、オンライン学習や読書といった独学で身につけることは難しく、少人数の学びの集団(コミュニティ)の中での深い対話や議論を通じて最も効果的に修得できると考えられます。
 そのために、IPP は、社会人の方が働きながら通学できる専門職大学院ではなく、社会人経験者・未経験者が共に、フルタイムで学ぶ大学院として20年前に設立されました。その教育方針は、教育のデジタル化が進むと考えられるこれからも、維持・強化していきたいと考えています。
 IPP では、公共政策や国際政策に関わる諸課題の本質と解決策を見出す力を磨いてもらうための基礎科目や実践的科目を提供してきました。そこで修得する力は、公共部門だけでなく、民間組織でも求められる能力です。実際、卒業生の多くが民間企業で活躍しています。そして、民間の立場から、国際政策や公共政策の改善に取り組んでくれている卒業生も少なくありません。

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 IPP で学修する上記のような能力は、1年あるいは2年で簡単に身につくものではありません。卒業後も磨き続けていくことになるでしょう。卒業生の皆さんが、社会で直面する様々な課題に取り組む中で、IPPで広げた根をさらに深く広げて、社会を支える大樹となるべく、成長を続けてくれていることを期待しています。
 本年度は創立20周年を記念して、いくつかの記念事業を計画しています。これまでの私たちの教育の足跡を確認し、今後のさらなる発展のための基盤を固めておきたいと思います。この Web サイトでは、これまでの20年を振り返るともに、20周年記念事業について、お知らせしていきます。
  現在、国立大学法人は、国から交付される運営費交付金が毎年少しずつ減らされ、財源確保も自助努力が促されています。IPP の予算も削減されており、IPP が予測困難な時代を生き抜き発展するためには、財源面での基盤(根っこ)の強化も必要となっています。
 本年 度は、20周年記念募金として、1,000万円を目標に、IPP基金へのご寄付を呼びかけさせて頂きます。日本そして世界の社会課題を改善・解決できる人材のさらなる育成のために、IPP の取り組みに賛同して下さる皆様からのご寄付をお願いできますと幸いです。
 一橋大学基金を通じたご寄付となりますので、税制上の優遇措置がございます。卒業生およびご家族の皆さま、退職された教職員の皆さま、社員・職員の派遣や採用で本学との関わりのある企業の皆さま、そして本学の教育活動を応援して下さる皆さま方に、今後の本学の発展のために、ご寄付を頂けますと大変ありがたく存じます。
  なお本学では、これからも基金の充実に努めていきたいと考えております。一橋大学では「寄附講義」という形で企業等からのご支援を頂く仕組みもあります。IPP では、今後とも社会連携を通じて教育を充実させていく予定で、ぜひ寄付講義も検討させて頂きたいと考えています。ご関心を持って頂ける場合、IPP 事務室までお気軽にご連絡下さい。
  私たちは、これまでの20年の歩みを基礎として、日本における専門職教育のさらなる充実・発展のために、これからも歩み続けていきます。
 
一橋大学 国際・公共政策大学院
院長 山重慎二 

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