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国際・公共政策大学院院長 秋山 信将

 皆さんは、自分がどの「コミュニティ」に住んでいると考えていますか。家族、町内会、地方自治体、国家、国際社会。あるいは趣味のサークルと答える人もいるかもしれません。残念なことですが、今、これらあらゆるレベルのコミュニティで日々問題が発生しています。老朽化するインフラの更新、到来した少子高齢化社会における持続可能な社会保障のあり方、経済格差の問題、魅力ある街づくり、地球温暖化対策、テロや紛争、大量破壊兵器の拡散、など、多くの深刻な問題が解決策を待っています。

 問題の中には個人の取り組みによって解決できる問題もあるかもしれません。しかし、今挙げたような問題は、コミュニティとしての取り組み、コミュニティのメンバー間の協力がなければ解決できません。我々がよく生きるためには、個の充実とともに、コミュニティ全体を充実させることが欠かせないのです。そして、コミュニティとして問題の解決にあたるために施されるのが公共政策です。

 一橋大学国際・公共政策大学院は、法律学・行政学、国際関係、経済学のいずれかの専門領域の分析方法を習得し、国家・市場・市民社会等多様な角度から、公共政策の立案・実施にあたるプロフェッショナルな人材の育成を目指しています。

 私は、そのような人材には、以下の4つの要素が備わっていてほしいと感じています。

 第一に「公共」の精神です。公共とは、「私」に対比する概念ではありません。むしろ個々の「私」がよりよい生活を送ることを目的とし、コミュニティ全体の共通利益を追求するサービスが提供されるべき開かれた空間です。個々人が幸福を追求することを可能にするために、高い倫理性をもってコミュニティの共通利益を追求するためのサービス精神を持ってほしいと思います。

 第二に、難しい問題に取り組み解決するための「知的基礎体力」と「スキル」です。本大学院では、公共政策研究の最新の成果を実務へと架橋し、また実務での問題を教育へと反映させることで実践的な問題解決のスキルを身に着けてもらうためのカリキュラムを用意しています。そして、獲得したスキルを、国内外の社会情勢やニーズの変動の中で陳腐化させることなく、変化に適応し、応用していくための理論的基礎と思考能力、つまり「知的基礎体力」を獲得してほしいと思います。

 第三に、「国際性」です。今日、日本国内においても多くの課題が国際的側面を持っていますし、我々の日々の生活が国際化していることを感じないことはありません。どのようなコミュニティであっても公共政策に関与する人は、多元的な価値観、多様な考え方を常に想定しておく必要があります。本大学院では、必修も含め多くの科目が英語で開講されており、アジア諸国をはじめとして多くの国から留学生が来ています。またイタリアのボッコーニ大学やベルギーのルーヴェン・カトリック大学など協定校への派遣などの機会もあります。このような環境の中に身を置くことで多元的・多面的思考の習慣を獲得してほしいと思います。

 第四に、「協働」のスピリットです。どんな政策でも、一人の力だけで立案・実施することは不可能です。背反する利害を抱えていたり、考え方が異なっている人々の間でいかに共通の解を導き出すのかは、政策の現場において常に直面する課題です。そのような場面で自分はどのように行動すべきか、おそらく、本大学院の少人数のゼミ形式やプロジェクト形式の授業における議論や意見交換を通じて学べることも多くあると思います。

 私は、一橋大学国際・公共政策大学院が、意欲のある皆さんが公共政策を担うにふさわしい資質と能力を獲得するために、皆さんと協力し、また皆さんの努力を支援し、そして一緒になってその成功を喜ぶところでありたいと思っています。

2018年12月