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新型コロナウイルス時代をどう生きるか

国際・公共政策大学院院長 山重 慎二

  2019年の秋に、おそらくたった1人の「人への感染」から始まった新型コロナウイルスが、極めて短い時間で世界中に広まり、パンデミック(感染症の世界的大流行)が発生しています。ウイルスに感染することで発症する「新型コロナウイルス感染症」は、WHO(世界保健機関)によって COVID-19 と命名され、増え続ける重症者への医療従事者による献身的な対応が、世界中で行われています。

ワクチンや治療方法の開発努力も続けられています。治療法やワクチンが確立・普及すれば、現在の季節性インフルエンザと同じような感染症とみなされる段階に至るでしょう。ただ、現代の科学技術をもってしても、それまでには1年から1年半必要だろうというのが、現時点(2020年4月)でのWHOの見通しです。

感染症は、人々の接触を制限することで、感染爆発を食い止め、死者数を抑えられます。しかし、それは経済活動を縮小させ、不況や失業や貧困といった社会・経済問題を引き起こすことになります。新型コロナウイルス問題は、保健・医療の問題であると同時に、社会・経済問題でもあります。

実は、ウイルスを世界中に拡散させているのは、私たち人間です。問題解決のためには、人間行動への深い理解が不可欠です。医療の提供や薬の開発を行うのは、医療や医薬品の専門家ですが、医療制度や行動制限のルール作りに影響を与えるのは、法律や政策の専門家です。そして、パンデミックの鎮静化に不可欠な国際機関の関与や国際協調に関しては、国際関係の専門家の貢献も望まれます。

感染症の問題は、理系の問題でもあると同時に、文系の問題でもあるのです。適切な対応を行うためには、心理学、社会学、法律学、行政学、経済学、国際関係学などの人文・社会科学の専門家が、分析や政策提案を行うことが重要です。

特に、グローバル化された世界では、治療法やワクチンの開発より速いスピードで感染が広がる可能性があります。さらに、今後、地球温暖化が進むと、新たなパンデミックが発生する可能性が高まるとの指摘もあります。

深刻なパンデミックに対して、人文・社会科学の専門家は、治療法やワクチンの開発を待つだけでなく、どのような政策的対応が望ましいかを研究・議論する必要があると強く感じています。法律学、行政学、経済学、国際関係学などの専門家を擁し、「先端研究の基礎に立つ高度専門教育」を行うことを理念の一つとして掲げる本大学院は、そのような研究や教育を率先して行う大学院でありたいと考えています。

もちろん世界には、感染症以外にも様々な政策的課題が存在します。その解決のための政策研究・教育も着実に継続することが必要です。そして、ウイルスとの闘いが長期に及ぶことを踏まえると、遠隔コミュニケーションの技術を利用した新たな教育手法を開発・活用していくことも必要と考えています。

「新型コロナウイルス時代」は、世界が大きな挑戦に直面する時代となりそうです。すでに多くの国や地域で、日常が一変し、新常態(New Normal)が生まれています。この時代をどう生きるかは、その後の私たちの生活や仕事に大きな影響を与えることになるでしょう。

人類は、危機を乗り越える過程で、様々な発見や発明を行ってきました。長期にわたる困難な時代になることが懸念されますが、英知を集めて、力を合わせて、困難を乗り越える道を探っていきましょう。

2020年4月